遠州織物の問題点を考える 【産元復活を願う】
2020.12.12
【遠州織物の問題点を考える】
遠州織物産地が、沈んでいく様子をリアルで見ている。
その中で、遠州織物産地が、そもそも生地からアパレル製品に向かってしまったことから、大きく方向性が変わってしまった。
遠州織物産地の、基盤を考えると、生地のブランデイングを行わなければならないのに、洋服、マスクなど、製品に特化してしまったことが残念と思っている。
弊社も、ストール、マスクなどは、行っているが、個の会社で、やるものだと思っている。
現座は、将来の遠州産地を考えると、そうも言ってられなくなった。
そもそも、一度原点に戻り、賃織り工場中心の、ブランディング、マーケッテングをしっかりやって、現状の産地の分業体制を考えないといけないと思っている。
逆に、ブランディング、マーケッテングの言葉を知っていても、意味が知らないと話にならない。
では、何故、遠州産地は失速しているのかを、考えてみてみると、原因が多くありすぎて、今回は、私なりに問題点を絞り、解決方法も考えながらコラムを書きました。
遠州織物産地の問題点
問題点は、3つある
①ブランデイングの失敗
②産元の方向性
③分業の体制が破壊
これを基に解説していきたい。
①ブランデイングの失敗
現在、遠州織物とは、グーグル検索すると、ワードがでるのは、「シャトル織機」「製品」「マスク」「遠州シャツ」など、全く主要な織物が出てこないのである。
遠州織物のイメージが、テキスタイルの産地、どんな織物工場があって、生産されているかをアピールしてないのである。
「シャツ」「マスク」が売れて、どれくらい生地が使われるのか考えても、やはり産地としては、生地を購入してくれる、アパレル、小売り、コンバター、問屋、商社にアピールしていかなければならない。
ブランディングのする相手は、生地を購入先であるアパレル、問屋などである。一般顧客ではなく、産地としては、数量を追うべきである。
確かに、シャトル織機は、遠州産地では、869台もあり、レピアは440台なので、遠州は、シャトル織機で打ち出していくことは当然である。
しかし、レピア織機の事も触れて欲しいのである。誤解されているのが、大量生産織機に言われているが、1台あたりの生産量は、シャトル織機と変わらず、織機回転数も200回転で織っているのが大半である。レピアが、本来、織物に対して万能で、賃織りは、なんでも織れることが、セールスポイントになっているため、あまり足を引っ張らないでほしい。そのレピア織機が、遠州織物のテキスタイルクリエーションのレベルを上がているのも事実である。
話を戻すが、要するに、遠州織物のテキスタイルの技術、クリエーションを、もっとアピールしないと、すべてのアパレルが、シャトル織機の平織りが欲しいわけではなく、数量の取れる、遠州織物のドビー、ジュガード織もある。遠州織物産地の魅力を、一人の多くの人に知っていただきたい。
解決方法
〇遠州織物産地を、織物工場、染色、産元も含んだブランディングを行う。
〇製品などの、アピールを止め、本来のお客様、アパレルに対してのブランディングを行う。
〇レピア織機、ジャガード織機の織物も紹介していく。
〇テキスタイルの伝統技術、先染めドビー、先染めジャガート織物をPRしていく
製品が売れても産地は潰れます。やはり、メインは生地生産です。生地生産量があれば、産地に分業に仕事が回り、廃業を防ぐことができるからです。
製品をやるのは、個でお願いするしかないです。
②産元の方向性
一番頑張ってもらいたいのは、産元である。産地を分業を守っている役割は大きい。
いつのまにか、遠州の産元も少なくなってしまったが、数はわからないが、現在20社位は健在していると思われる。
産元が産地と同じベクトルで進めば、織物産地の寿命が伸ばせる
産元がやるべき仕事は
〇もっと遠州産地に仕事を出す。
産元のメリットは、工場を持たないため、メールだけで、全国に仕事を発注できる、海外生産(中国)も積極的に行っているため、少ロットのものは遠州、ロットの大きなものは、遠州産地以外、又は、中国で生産されてる。
やはり、生地単価高いため、遠州以外に発注していると思われる。
残念ながら、これでは、遠州産地の分業基盤が弱ってしまう。
〇遠州産地の工場を仕事をだしている産元を応援する
遠州産地のPRバランスが悪いと思っている。90%以上の織物工場が賃織りなので、ここにもっと焦点を集めることが重要である。
逆に、海外から生地を購入するところは、産地産元から外れて、問屋、コンバターとして、すみ分けを行うことを進める。
きっと、地元の生地を使わない方が、コストメリットが良い。中国から生地を輸入して、遠州加工場で加工すれば、儲かるはずであるし、それも、りっぱなビジネスだと思っている。
しかし、残念ながら、遠州織物産地にとってイメージが良くないのも事実である。
話を戻しが、純粋に産地に仕事を出す産元には感謝する。
賃織り織物工場と、産元の関係は良好である。
産元復活こそ、産地の復活につながる。と思っている。
解決方法
・遠州織物産地の展示会を産元が参加していただく
・遠州での生産に力を入れていくとことに、協会、組合が資金的応援するのが良いと思う。
要するに、遠州産地の、キーポイントなのである。
90%以上が賃織りなので、産元が遠州産地を体制を守っているのは事実である。
③分業の体制が破壊
仕事量は、年々減ってきている。
綿織物は、遠州織物の生地から、県外、海外から、遠州地区の染色加工場に入ってきている。
日本の、どこでも綿生地が買えるし、海外からも更に安く買うことができる。そのため、遠州産地の、織物工場の廃業率は、かなり高くなっている。
5年後には、織物工場が、現在の3分1以下になっていると思われる。
遠州の分業体制は、バランスが崩れると途端に廃業の加速が一気に始まる。
例えば、織物工場の比率で、分業の体制が成り立っている。ここが、減ることになると、染色工場、サイジングなどの装置産業などが廃業に向かってしまう可能性が高くなる。
産元が、産地内に仕事を出していけば、織物工場の生機生産を維持できるので、遠州産地の分業破壊を止めることができる。
では、遠州織物ポテンシャルが低いのかと言われると、案外そうでもないと思われる。
遠州織物の代表的な生地は、麻リネン、シアサッカー、多重織、強撚織物、別珍コール天など、付加価値の高い綿生地は、遠州織物でしかできない織物が沢山ある。
では、何故、仕事が少ないのか?
根本は生地値が高いから、使われないのである。単純な話である。
産地内の仕事が減ると、実は、それに沿って加工賃が上がってくる。それも、遠州織物産地で100%で作ると、生地値がバカ高くなってしまうのも現実なのである。
最近は、アパレルから、「御社の生地高くて買えません。」と言われることが増えてきた。
分業で、1社1社が、少し単価を上げると、最終生地単価が高くなり、売れなくなってきているのも事実である。
なんでも、他社が潰れて、産地の最後の1社になると、何を勘違いして加工賃が上がる。上げたら、最終的には、廃業が待っている。
仕事量が増えれば、多少の人件費アップ、光熱費、原料代が上がっても、量があれば、うまみの方が大きいので、加工賃の上昇を抑えることができる。
多品種少ロットだけでは、産地を救えないのである。ある程度数量が欲しいのである。
解決方法
・織物工場が減ると、染色工場、サイジング、整経などの廃業が増える。だから、産地織物生産量を増やすかを考えないといけない。
・遠州織物のポテンシャルはある。サッカー、多重織、新入りピケ、先染めドビー、別珍コール天など、綿織物バラエティさがあるので、PRを行っていく
・多品種・少ロットよりも、生産量が沢山あれば、工賃、加工賃を抑えることができ、産地競争力がつく
・産地に受注量が増えると、現実に、仕事の効率が上がる
・利益が出ると、最新の機械を投入が可能になり、納期、品質にも安定してくるはずである。
上記3つの問題点と解決方法を考えました。
ロジック的ではありませんが、要するに、アパレルに対して遠州織物産地に仕事がくるような魅力ある遠州産地にしたいと思っています。
有限会社福田織物 代表取締役社長
福田 靖